大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(ネ)2206号 判決

証拠を綜合すると次の事実を認めることができる。即ち訴外東洋化成ゴム株式会社はかねて被控訴会社と自転車タイヤ、チューブ等の販売取引を継続して来たが、昭和二十七年五、六月頃から次第に買掛代金の未払が多くなりその額千数百万円に達したので、被控訴会社から保証ないし担保差入がなくては取引を継続し難い旨厳重な督促を受けていた。一方当時右訴外会社の代表取締役であつた合田明は、控訴人と眤懇の間柄であつた訴外鈴木勇と相識り、同人から東京相互銀行に七、八十万円の債務の担保となつていた控訴人所有の本件建物の担保を解除してくれれば、同建物を右訴外会社の用に供してもよいという話をもちかけられたので、控訴人の承諾の下に同銀行に代払いして右担保を解除し、且つ当該建物の権利証の交付を受けて被控訴会社に差入れて置いたところが被控訴会社の方でも急ぎ根抵当権の設定を要望するし、その頃被控訴会社から自転車タイヤ類の供給を得たいと考えていた控訴人は、直接被控訴会社より自転車タイヤ二、〇〇〇ペア位出荷して貰いたい旨申入れたが、被控訴会社は控訴人との直接取引は困るといつてこれを断り、結局根抵当権を設定すれば被控訴会社は右訴外会社と取引を継続するのであるから同会社を通じて控訴人もこれを入手し得るということから、控訴人も右根抵当権設定の件を承諾し、昭和二十七年九月十二日頃控訴人方において被控訴会社の社員及び前記鈴木勇同席の上、既に被控訴会社において文面をしたためてあつたとおり、被控訴会社に対する東洋化成ゴム株式会社の現在及び将来の買掛債務につき控訴人が連帯保証し、これが債務の担保としてその所有の本件建物につき債権極度額千七百万円の根抵当権を設定してその登記をなす旨の本文の記載ある担保差入証に控訴人の署名捺印を求め、控訴人は右文面を了知の上署名捺印をし、同月十九日鈴木勇が控訴人の代理人としてその登記を経由した。前記交渉の間も被控訴会社は右訴外会社に約二百万円位相当のタイヤを出荷したが、その代金の半分は不払となり、その後出荷品のダンピング等不信行為の廉で同年十月頃から両者間の取引は停止され、従つて控訴人も商品の供給を受けられなくなるに至つた。

以上のとおり認定することができ、これらの事実に徴して考えると訴外東洋化成ゴム株式会社をも含め、本件当事者間に前示登記事項に符合するような根抵当権設定契約が成立したことは明らかであり、被控訴会社が控訴人に対し根抵当権を設定すれば直接控訴人に対し自転車タイヤ二千ペアを出荷すると欺いて該契約を締結せしめたものでなく、そのことを契約の要素としたものでもないことが窺われるから、この点につき当初の控訴人の真意に反する結果となつても、これを以て要素に錯誤ある無効の行為ともいうことはできないから控訴人の本訴請求は失当であるとしてこれを棄却した。

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